お父さんが少し変わってきました。
「シンシアはうちの犬や。そやから、どっちにしてもずっとおるんや。自分でなんとかせなあかん。」
お父さんの自覚でした。トレーナーさんはそんなお父さんを見届けると東京へ帰って行きました。
　もう誰も頼る人はいません。お父さんはすすんで私との散歩へ行くようになりました。私のことをよく見てくれるようにもなりました。コンピューターの前に座ると何時間も遊んでくれなかったのに、休み時間をとって相手をしてくれ、家の中でもできるボール探しなど遊びを工夫するようになりました。
　お父さんと向き合う時間が増えて、昼間は退屈だった生活が変わってきたのです。以前はお母さんの帰ってくる頃になると庭に出てずっと待っていたのですが、それもしなくなりました。
「お父さんも私の事ちゃんとみてくれるんだ。」私も考えが変わってきました。私が東京から帰ってきてから夏が終わり、樹木の色付く秋となっていました。

お父さん、お母さんと一緒。

(98.06.07掲載)
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